個展「おいしいあの子」雨宮沙月インタビュー(3/3)

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絵画立体に留まらず、舞台、マンガとジャンルを超えた活躍を見せる作家・雨宮沙月。
その雨宮の個展「おいしいあの子」が7月25日から30日の間、新宿眼科画廊で行われた。
Creators at Workではその展示の様子を紹介するとともに、
併せて行った雨宮へのインタビューを紹介する。
記事の完結編となる本稿では、インタビューの後編を掲載する。
前編記事:個展「おいしいあの子」雨宮沙月インタビュー(2/3)

食べ物の偽物が好き

-この作品はすごいオシャレですね。

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雨宮沙月(以下、雨):これは執念の塊。どうしてもゼリーの形でラメを固めたいって思ってて、プリンのカップにひたすらラメを流し込んでた。外で天日干しにして、乾け乾けってやって。薄皮でゼリーっぽい形ができて、ようやく作れたんですけど、なんでそんなに執着してたのか今になって分かんないんですよね。

-(笑)

雨:ラメでゼリーが作りたかった。食べものを作るの、食べ物の偽物が好きなんですよね。

-実際の料理とかはするんですか。

雨:全然できないんですよ。こんな感じの偽物を作ってるのに、実際の料理がちゃんと作れたら逆にすごいですよね。料理苦手なんですよね。最近気づいたんですけど、工程をちゃんと考えて描くのが苦手で。デジタルで絵を描いてる人って、レイヤー分けとかすごい繊細じゃないですか。

-考えながら描いてますよね。

雨:私はもう、途中でいいやってなってゴリゴリ重ねてく作り方なんで、超アナログ。料理とかも、全部同時に入れてもいいだろみたいな感覚で作っちゃう。

-焼肉とか鍋のときに最初から全部入れちゃうタイプですね。

おいしいあの子

-今回の展示のテーマも面白いですよね。

雨:「おいしいあの子」。まんがもあるんですよ。twitterに上げたんですけど、若干加筆したんです。

-他にも何か食べてる絵がけっこうありますね。

雨:そう。食べてるのを観るのがすごい好きなんですよね。私の展示って作品の情報がいろんなとこに飛びすぎて、何を観ればいいのか分かんなくなっちゃうんだろうなと思ってた。そこで一つお話みたいなものがあったら、来た人が観やすいだろうなって思ったんです。女の子がお菓子でできてて、男の子に食べられて、で、その男の子が女の子を作り直すの。

-男の子が作り直したものがこれになるんですね。

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雨:そう!ちょっと男の子っぽいものを組み合わせて。車とか。弟のおもちゃとかをかき集めて。若干色合いも黒いかな。

-こういった素材も小さい頃から集めていたという話がありましたよね。

雨:おもちゃとかもなかなか捨てられなくて。食べ物系の消しゴムが好きでめっちゃ集めていた。

-僕も集めてました。

雨:集めますよね。あとシールを集めるのが女子の間でめっちゃ流行ってました。メモ帳とか、そういうのなかなか捨てられないじゃないですか。けっこうみんなとってあると思うんですけど。で、それも作品に使えば消化できると思って、貼付ける作業をしていて、作品にもなるしものも片付くし部屋も片付くし、すごいいいじゃん、と思ってやってますね。

-でも作品になったとしても今度は作品が増えてきて、今度は部屋が作品で埋まっちゃうんじゃ。

雨:あー。でも最近はお父さんに部屋にも押し込んでるので。

-(笑)それ何の解決にもなってないですよ。お父さんが困るだけですよ。

雨:立体作品ってほんとそれで、保存の場にめちゃくちゃ困るんですよね。だから、家でつくるとどうしても小さいものになりがちなんですよね。大きいものを作りたいなーと思うんですけど。

-今回の展示では人物のバカでかい作品が展示されていましたよね。小学生くらいの大きさ。

雨:どうしても、立ったお人形を作りたくて。

-あれも家で作られたんですか?

雨:そうですね。一時期は居間でめっちゃ作ってたんですけど、畳の部屋で作ってて、絵の具とかすごいこぼしたら、「部屋をきれいにしてモノをつくるのはモノをつくる人の基本だろ」ってお父さんに怒られた(笑)

好きなものがあるのは大事

-大学に入ってから演劇を始められて、演劇のために一年間休学していたんですよね。

雨:演劇のためっていうか、生活が演劇ばっかりになっちゃうから絵も描きたいと思って休学したんです。けどほとんど描かないで終わっちゃった。9月ぐらいになると、一気に年末になるじゃないですか。年の始めに展示に一回参加したくらいで。もっといろいろやるつもりだったのにと思ってすごい焦って。で、3331の展示にとりあえず申し込んでそのためにバーッと作って出した。春には就活を一応していたんですけど、就活始めてから心が段々弱ってきて、3月ぐらいになったらめちゃくちゃソシャゲにハマって。「ボーイフレンド(仮)」をやりだして。それからすごく精神が安定して、あっ、絵を描くのたのしい!みたいな。

-ふーん。

雨:いやこの話がほんと展示に繋がるんですよ!好きなことがあるって大事ですよ。

-うーん、まあ就活大変ですからね。そこでソシャゲに救われたと。

雨:そう。好きなものがあるのは大事だと思います。

もっと展示方法を模索してみたい

-今回で個展は2回目だったんですよね。

雨:そうですね。一回目の個展のときはほんと衝動的なもので、思いついたらすぐに申し込んでました。絵はpixivで上げればいいじゃんって思ってたんですけど、立体ばっかりは生で見てほしいなっていう思いがすごいあって。絵を描き始めたのは大学に入る前の3月の末だから、展示が10月からだったんでそれまでずーっと描いてました。で、それが終わってからありがたいことにグループ展に誘っていただいて。どんどん展示をやっていくうちに、劇団も旗揚げしてて。で、気づいたら自分で何か申し込むとかしなくなってた。今回の個展をやりたいなと思ったのは、自分の絵だけで一部屋をいっぱいにするのをやってみたいなと思ったのと、一年間なんもやってなかった期間があって、このままじゃやばいなと思って。で、前回と同じでとりあえず申し込んだ。今回は3月くらいに決めて、その4ヶ月くらいの間にずっと個展のために制作してたんですけど、それとプラスで3年間貯めてたものがあったので全然ストレス無くできたんですよ。

-搬入大変じゃなかったですか。

雨:搬入はお母さんが付き合ってくれた。最初は私、展示の見せ方にはこだわりを持ってなかったんですけど、5月に伊藤ゆうやさんという方の展示に連れて行ってもらって、そのギャラリーのオーナーさんから額縁とか作った方がいいとかいろいろアドバイスをいただいた。よーし、私も個展ではちゃんとやろう!と思ってたんですけど、最初は上手くできなくて。そこでお母さんがその場の勢いで額縁とっさに作ってくれた。カッターで指切って血だらけになりながら。最初はあんまり大事だと思ってなかったんですけど、額縁付けるの、今回でほんと大事だなと思いました。

-今回の展示の額縁はいいですよね。しめ縄がいい。お祭り感がありますね。

雨:(笑)バーゲンみたいな感じ。画用紙に描いたものが多いんで、ただでさえペラペラだから。次に展示するときは、もっと展示方法を模索してみたいな。

-今回も良かったですよ。音楽も合ってましたし。

雨:そう、「シャンプーハッツ」さんに協力してもらって、展示会場でその楽曲を流させてもらった。無音の中で見るような高尚な絵じゃないから、もっと気楽に観てほしいと思って。でもそんなに音楽に詳しくないから、何を流せばいいか全然分かんなかったんですけど、伊藤ゆうやさんの展示で偶然知り合わせてもらった。

-展示物と音楽がすごく合ってましたね。

雨:あれで無音だったら威圧感がある!みんな胃もたれするとか言いながら帰っていっちゃうんで。和らげてくれたと思います。

(インタビュアー:じょいとも 8月9日 ドトールコーヒー鶯谷北口店にて)

 

雨宮沙月 | Satsuki Amemiya

1991年生まれ。千葉県出身。
2011年に胃画廊の素敵作家に選出されたのを皮切りに、数多くの展示に参加。
絵画、立体、漫画とジャンルはバラバラながらも、一見して雨宮を分かるような独特の作風で存在感を示す。
劇団アナログスイッチ所属。

pixiv:http://www.pixiv.net/member.php?id=2933106
Tumblr: http://amemimimi.tumblr.com

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