個展『CAVE & WILDERNESS』鳥彦インタビュー(2/2)

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象徴的なモチーフと画面作りで京都の画壇に確かな存在感を示す画家・鳥彦。
彼の個展『CAVE & WILDERNESS ~あるいは港を過ぎ去った男達~』が6月10~22日にギャラリー知で行われた。
インタビュー後編となる今回では、鳥彦自身の人物形成や、展示に対するこだわりを聞いた。
(前編はこちら

できることやってくしかないかな

-一作品の製作期間はどれくらいかけてますか?

鳥彦(以下、鳥):早けりゃ2日3日でできますね。だいたい頭の中でバーっとイメージが決まってから、パッと下書きして、ガリガリっと銅の板に描画をして、あとは、刷ってみて。何日もかけて制作したり、ちょっとしたところでもこだわって作り直すという人もいるんですけど、ワシは次々作っていったほうが性に合ってるかな。あんまり才能がないし努力もしたくないという怠け者なんです。集中力が続かないんですね。なんで、できることやっていくしかないかなと。そういうところを無理矢理変えようとしても、どっか負担が出てくるだけだと思うんで、そこについては深く考えず作っています。

人間の顔描きたくねえなーと思って描いてたら鳥っぽい形になった

-作風は変わっていっていますか?鳥彦さんといえば鳥のキャラクターに、ダークな雰囲気の作風ですが。

鳥:なんというか、ワンパターンですね。あんまり新しいことを毎度やっていこうっていう感じでもなくて。毎度毎度新しい技法を取り入れて、常に違う物を作っていこうという人もいますし、そっちの方がいいなと思うんですけども・・・ワシにはできねえなあ。変な自意識に囚われて入るんで、ずーっと同じ調子でやってくとは思いますね。

-鳥をモチーフにし始めたのはいつ頃からなんですか?

鳥:シャーペンで書き始めたくらいからかな。というのも、最初はね、人の顔を描くのが嫌で、特にリアルに人の顔を描こうとしてるような絵とかが、すごい嫌いなんですよ。時間、お金、気力を使って留めておかないといけないようなワンシーンが、人間の顔には無いなと思ってるんです。だから、自分で描くのはまっぴらごめんだなと思ってて。で、人間の顔描きたくねえなーと思って描いてたら、ああいう鳥っぽい形になってきて、それを続けていくうちに今の作風になった。ワシは本とか読むのが好きだし、神話とか民話みたいの好きなので、そういうのから影響を受けたのもあると思います。今はもっと、意識的に神話や民話のイメージを取り入れてる様にしています。

-鳥彦って名前を名乗り始めたのは。

鳥:覚えやすいようにしよう、鳥描いてる人っていうのを分かるようにしたいなというのもあって、鳥彦になった。本名にも彦という字が入ってるので、一文字だけ替えて。

-馴染んでますよね。大学の先生からも鳥彦君とか鳥彦さんとか呼ばれてる。

鳥:自分でも、鳥彦とばかり呼ばれるので自分の名前を忘れそうなときもあるんですけどね。

ワシ

-ワシって一人称を使い始めたのはいつからですか。

鳥:これは高校くらいのときかな。忘れた。たぶん高校2年か3年。

-きっかけとかあったんですか。

鳥:小林よしのりにはだいぶ影響された。あとは、早くジジイになりてえって思って。今はもう年をとるのがこわくてしょうがないですけども。なんか、大学一回生のときからなぜか助手さんとか教授に間違えられて。でも最近は、実年齢が見た目に追いついてきて、あんまり、開きがあるというのは無くなってきましたね。

-そうですか?

鳥:そうですね。あと俺って言うのも僕って言うのも、しっくりこなかった。だからワシ。かっこつけようとして失敗したみたいな感じなんですけど、今は誰も突っ込まないから、これでええんかなって思ってます。

これはいけるで!と思って会期はじまったら凄い落ち込む、の繰り返し

-今回は展示のタイトルは「CAVE & WILDERNESS(洞窟と荒野)」。

鳥:そうです。もともとwebショップのタイトルどうしようかなと考えてて。そこでピンときたのが「CAVE & WILDERNESS」。それで、このタイトルで作品一つ描けるんやないか、それに個展のタイトルにもええやん、と思って使った。ええやん、って自分で自画自賛して。そんな感じでトントン拍子でいろんなとこに使ってます。

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鳥彦 『CAVE & WILDNESS』 版画 2014

-webショップはどんな意図でされているのですか。

鳥:ショップは、在庫というか、展示する予定ないものをずっと押し入れにしまっておくのも勿体ないんで、それだったら、また見れるようにもして、買えるようにもしとこうということで立ち上げてます。だから、今回の個展が終わったら、またちょこちょこ新しい商品として公開していくつもりです。

-webサイトにも作品は掲載してますよね。

鳥:そうそう。でもwebサイトは見るだけですし、webショップなら商品として出すっていう態度をはっきりさせられる。コレクターさんとかだったら、これほしいな、って思われることもあるかもしれないですけど、webサイトでパッと絵を見るだけで、それが売り物だとは思わないでしょうし、値段がいくらかってのは考えたことも無いっていう人がほとんどだと思うんですよ。個人的な目標は、作品が生んだ金だけで生活できることなんで。まあそのためにも考えなければいけないことはいろいろあるんですけど。ひとまずは、真面目に制作して、真面目に展示やって、徐々に、自分の作品知ってる人とか、自分の作品買ってくれる人を増やしたり、とかですね。特に絵とか、売れないしな。版画は値段も安いしね。そのくせ、技法的に数が刷れないものを選んでますし。

-どれぐらい刷られているのですか。

鳥:一作品につき1から5ですね。

-売れ行きはどうですか。

鳥:あんまり。そもそも、期待しすぎなとこもあるんですけど。自分のことを過大評価しすぎて。これはいけるで!と思って会期はじまったら凄い落ち込む、の繰り返しで。最近は薄れてきましたけどね、落ち込み具合は。

良い展示方法をちゃんと考えないと個展をやる意味はあまり無い

-ではそろそろ時間がきたので最後の質問です。個展に対してどのようなポリシーを持っていますか。

鳥:展示とか行くと、作品頑張って作ったのは分かるんだけど、展示が良くないのが多くて。たとえば、今日食べたピネライス(インタビュー場所となったキッチンゴンの名物料理)とかも、床にバーンとぶちまけられたら誰も食べてくれないですよね。そういう展示をしている人が山ほどいます。作品つくるだけじゃなくて、作った作品をちゃんと美味しく食べてもらえるように、内装整えて、テーブル用意して、それに合った食器出して、とかみんな考えてくれとよく思います。自分でもちゃんとできてるかどうかは観た人が決めるんですけども、より良い絵を作ってるのを同じくらい、良い展示方法をちゃんと考えないと、個展をやる意味はあまり無いんじゃないかなと思いますね。

-鳥彦さんはそういったものが額とか照明とかいろんなこだわりに出ていますよね。

鳥:そうですね。お金、時間、気力のどれかか、全部を使わないと良くはならないんで。言ってしまえば、けっこうな金をつぎ込んでしまえばそれなりの体裁は整うんですけどね。もちろん、使えるお金や精神力は限られてるんで、どこにつぎ込むかちゃんと考えてかないとな、というのはありますね。

(インタビュアー:じょいとも、Mk 6月15日 キッチンゴンにて)

鳥彦 | torihiko

京都府在住。
鳥人画家。メゾチント技法を中心とした版画作品を制作。
印象的な構図とダークな色調、そして鳥人間を始めとする象徴的なモチーフと特徴とする。
主な展示歴は「SONS OF THE SUN」、「OLD AGE」、「小さな作品展」(いずれも会場はGallery知)など。

http://magatu.karakasa.com

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