哲学、芸術、デザイン事務所創業、そして次なる挑戦 APATERO代表/美術作家・長田航インタビュー(1/3)


大阪に居を構え「カゲキをステキにデザインする」という理念のもと制作を行う新興デザイン事務所・APATERO
その代表であり、自身作家活動を行われている長田航にインタビューを行った。
長田氏の制作にかける思いや、
専務の郡哲平を交え、デザイン事務所としての生々しい現実、
そしてこれからの行く先について語っていただいた。

 

ラクガキやコントばかりやってる怠け者というレッテルを自分に貼っていた

-来歴を教えてください。

長田航(以下、長):大阪の家に生まれて、大阪の普通の小中高に通い、大学は愛媛大学ですね。愛媛大学の理学部数学科にいました。で、そこを中退して今ですね。そんなもんですね。

-数学科なんですね。少なくとも高校を卒業するくらいまでは理系の学問に道に進もうとしていたんですか。

長:そうですね。哲学と数学がすごく好きやって。アメリカの大学やったら、数学の博士号と哲学の博士号って一緒の博士号がもらえるんですよ。

-そうなんですか。

長:本来は全然、別れてる学問じゃないんですよね。数学も哲学ももともと大本は同じところにあるんですけど、日本は、乱暴に、文系と理系を分けちゃってるんですよ。で、そのときの分け方に余りにも思慮に欠けてるばっかりに、本来分断されるべきでないものが分断されてしまっている。僕は数学もやりたい哲学もやりたいと思ってたんです。でも哲学科に行きたいと親に言ったら「あんた将来どうするん」て言われました(笑)。そう言われたときに答えが無かった。だから「数学科に行って教師にでもなるわ」って両親を説得して入学しました。もちろん教師になるつもりは全然無くて、やりたいことは変わってなかったんですけど。

-創作についてはいつ頃からされていたのですか。

長:絵を描いたりとかモノ作ったりとか演劇したりとか音楽やったりとか、まあいろんなことは、小学校の頃からずっとやってたんですけど、高校大学と行ってもその癖は抜けなくて。自分は寄り道をしてると思ってたんですよね。ホンマは数学の勉強をせなならんのに、俺はラクガキとかコントとかばっかりやってる、言うなれば怠け者のレッテルを自分に貼ってたんです。けど、最近になって考えが変わってきて、大本は結局一緒なんかなと思ったんですね。

-どういうことですか。

長:哲学・数学において自分が魅力を感じてたもの、僕が作品をつくったり絵を描いたりするにあたって一番表現したいものが「言葉」。言葉の部分なんですね。数学って、掘り下げていけばいくほどに数字って出なくなってくるんです。全部記号だけで処理していくことになるんですね。意味を当てはめた記号だけで。意味を持つ記号のやりとりってそれ即ち日常のコミュニケーションなんですよ。それはつまり数理論理学や、記号論理学っていう記号で表現する数学の分野と一致するんですね。レトリックの無い、洗練され尽くした一行を厳密に重ね合わせていくことによって、世界を記述している新しい記号の列を見つけよう、というのが数学の根幹だと思うので。
言葉やコミュニケーションってどんなものかについて理解したい、っていう僕の興味は、結局ずっと変わっていません。

-それをテーマとして、作品をいま制作されているという形なんですね。

長:そうですね。表出する方法は変わるけど、根底は変わってない。米を使ってカレー作るかチャーハン作るか、みたいな。そんなもんだと思うんで。

今やっとかな、後であんときやってたらなって絶対思ってしまう

-そこから、APATEROの創業にどう繋がっていったんでしょうか。

長:まあ、一つは、タイミングが良かった。

-タイミングですか。

長:うん。いろんな状況が重なり、彼(APATERO専務・郡氏)も協力してくれるって言うてくれた。彼も他の会社に就職決まってたんですけど、それも取り消しにしてくれました。一度就職させてしまうと、もうそっからというのはなかなか難しいじゃないですか。だからタイミング的に、いろんなものがいい感じに、事務所やアトリエの話も、ありがたいことに舞い込んできたんですね。これは危険やけど、今やっとかな、後であんときやってたらなって絶対思ってしまうから。そういう弱い部分ってずっと残ると思うんで、それがすごく嫌で。まあ、僕らまだ23,4歳ですから、ぐちゃぐちゃになろうがしれてるんですね。結婚もしてへんし、自分一人のリスクでしかないから、別に失敗してもいいし、それに、自分を試してみたいという思いもありましたしね。

その対象のことをちゃんと知っておかないと否定もできない

-アーティストとしてではなくデザイン会社という業態を選んだ理由は何でしょうか。

長:デザインは自己表現じゃなくて、クライアントさんがOKと言ったものこそがOKですよね。一方芸術は自分がOKと言ったらOK。で、芸術とデザイン、自分はどちらに適性があるのかという部分で、迷ってたんです。それで、ちょっと片足突っ込んでみたら、分かるんじゃないか。とりあえず社会に片足突っ込んで自分を試してみようかなと。で、あとは、実際仕事するとなったらいろんな人と会う。自分よりも年上で、社会人として先輩の方々と、正面から喋ることになる。新入社員やったら、後輩らしく階段の一段二段下から喋らないといけない。でもこうやって、曲がりなりにも事務所を構えてしまって、社長の名刺を出すと、立場的には一緒なんですね。規模は違えど、業種は違うし求められてるものも違うんやから、向こうがどんなお偉いさんであろうが正面から喋ってこられます。もちろん若いから舐められるみたいな時もすごくありますけど。舐められる事自体も、僕が若いうちにやりたかったことやからしょうがない(笑)
僕は、社会の虚飾的な、ビジネスライクな部分に対しては、吐き気を催してしまうんです。でも、それを今までは上手く言葉にできなかった。自分の持ってるこの気持ち、この吐き気を言葉にするには、ある種の対照実験が必要やと思っていたんです。僕が作った作品っていうのは、やっぱりアンチテーゼ的な、否定の部分が強い。でも、対象のことをちゃんと知っておかないと、否定もできないんです。よく、どんなものかも知らんのに、流行ってるだけで嫌いっていう人いますよね。あれはすごく嫌いで。流行りものを「クソや」って言うことによって、俺は大衆と違うんだって自己表出してる。自分は何も出さずに、なにかを否定することで自己表現する。あれはすごくズルい。じゃあお前は何ができるんやって思う。でも、社会に対して僕は社会を何も知らんままに作品をつくっていったら自分もそうなってしまうなって思った。
僕は、わりと思想的な部分ばかり強くて、彼(専務の郡哲平氏)はどっちかっていうと地に足の着いたタイプ。やから、すごく助かってます。僕一人やったら、社会に片足突っ込もうと思ってもとても突っ込めなかった。

-2人でちゃんと役割が別れてるんですね。

長:そうですね。凹凸関係ではありますね。お互いの仕事が被ることが無い。仕事の案件はどちらかというとデジタルの方が多いんですけど、僕はデジタルは得意じゃない。なので、そこは彼が全てやってくれています。

郡哲平(以下、郡):僕はアナログで全く絵が描けない。

長:彼は昔からWindowsのペイントとかデジタルで絵を描いてたから。僕はもう完全にアナログ派。

ハッタリかまさないと見えん世界ってある

-創業時にタイミングが上手く重なったという話がありましたけど、一個目の案件もそのタイミングであったんですか。

長:一個目の案件って何でしたっけ。ホームページ?こっちに来る前も僕ら二人(長田氏と郡氏)でモノ作ったりとか、オリジナルグッズで展示やったりとか、ちらほらしとったんですね。で、APATEROを始めて最初の案件て、なんやっけ。知り合いのバンドさんのCDのジャケットとか、オリジナルグッズの制作とかっていうのが、僕らもバンドやってたんでそのツテが少しはあったので、そういった仕事をいくつかしていたんですけど。でもまぁ、案件があったから創業をした、というわけではないですね。

-APATEROが走り出してから仕事をとっていったんですね。

長:そうですね。入れ物から先に作りましたね。ハッタリ屋なんで、先にかまさないと。一応こういう入れ物で、僕らには肩書きがありますよって言っておかないと、誰からも信用されない。だから多少のハッタリって必要やなってすごく思いますね。人の見る目が違う。ズルって言ったらズルですけど、ハッタリかまさないと見えない世界ってあるので。そのために、事務所みたいなものを構えたというのはありますね。名刺とか事務所には、自分を自分以上の社会的価値ある存在に見せる魔力があるので。まあ、詐欺師と言われても仕方ないですけどね(笑)
<続く>

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*長田氏の希望により入浴しながらのインタビューとなった

 

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