個展「おいしいあの子」雨宮沙月インタビュー(2/3)

Pocket

絵画立体に留まらず、舞台、マンガとジャンルを超えた活躍を見せる作家・雨宮沙月。
その雨宮の個展「おいしいあの子」が7月25日から30日の間、新宿眼科画廊で行われた。
Creators at Workではその展示の様子を紹介するとともに、
併せて行った雨宮へのインタビューを紹介する。
展示の様子を写真で紹介した前回の記事はこちら

DSC01002

取材の経緯

-まず、本記事の読者の方々に向けて、経緯を話させてください。実はあめみさんには半月前に一度インタビューをさせていただいています。で、なぜ今またインタビューをしているかと言いますと、僕が間違えてそのときのインタビューの録音データが全て消してしまったからです。

雨宮沙月(以下、雨):前回は40分以上インタビューやってましたよね。

-その40分の中で面白い話がけっこうあったんですけど、

雨:うーん、忘れちゃった。

-そうなんですよね。で、本日改めて取材させていただいています。

 文化祭のチラシの絵を描いたら「気持ち悪いから使えない」って断られた

-来歴を伺いましたよね。たしか小学校くらいのときにキングダムハーツにハマっていらしたという話がありました。

雨:(笑)それ関係ない。今回はね、ちゃんと、アートと関係ある感じで話していきたいです。

-関係あるかもしれないですよ。時系列順にいきましょう。

雨:そう、小学校のときは普通に、キングダムハーツとかちゃおとかそういうのにハマってて、絵を模写したりしていました。中学になってもそうなんですけど、周りの子の絵の上手さに圧倒されて、絵を描かなくなった。うっすらと今みたいな絵を描いてたんですけど、文化祭のチラシでそういうのを描いたら「気持ち悪いから使えない」って断られた。それから「もう理解されない」みたいな気持ちになって。大学に入って、でまたこっそりノートの裏とかに描いていたら、「面白いじゃん」みたいな、言われて、絵を描くのがたのしいってなって。で、ちょうど震災があったときに、演劇もそれまでめっちゃやってて。で演劇の公演期間が一気に、活動ができなくなって、で時間が空いて、なんとなくpixivに登録して、ネットに上げ始めたら、「あっ、面白い絵を描いている人がいっぱいいる」という感じで、展示してることとか、グッズつくることとか、今みたいな感じで、絵を描くようになった。という感じですね。

-おお、シンプルにまとめていただいた。そして、いま作家活動を始めて3,4年ということですね。

雨:シンプルにまとまった。

-あと、中学ぐらいのときに「マンガとかダセェ」と思っていた時期があったとのことでしたが。

雨:あった(笑)中学校一年までは、自覚無しでアニメ文化とかすごい好きだったんですけど、中学校二年ぐらいになったときに、クラスに体育会系が多くて、アニメとかダサいんじゃないかという雰囲気があった。自分も何かダサイような気がして、いますごい後悔しているんですけど、自分の持っていたグッズとか、画集とか、ポスターを捨て始めて、フィギュアとかも捨てて、「オタクじゃないし」みたいな感じでセブンティーンとか買ってた時期があった。

-(笑)

雨:高校入ってからは逆に、高校は情報処理化だったので周りみんなオタクで、むしろオタクが主流みたいな感じ。だから私は「みんなダセェし」みたいな雰囲気出してたんだけど、気づいたら弟がガチのオタクになっていて、弟の影響でアニメ観るようになった。で、やっぱアニメとか観ると絵を描きたくなるから、自然と絵を描くようになったのかもしんない。ですね。私が描いてる絵自体は全然そんな画風じゃないですけど。

 展示をたくさん観ていた時期

-大学に入られて、展示をたくさん観られていた時期がありましたよね。の話がありましたね。僕(インタビュア・joytomo)が主催した展示「つかさラウンジ」にもお越しいただいていました。大学の1,2年くらい?

雨:メタ少年展を観に行ったのが2年のとき。ネルノダイスキさんとか竹下兄弟(晋平昇平)が出られていた展示。展示全体がすごくて、どう見られるのかを気にしないで作ってるのかなっていうのをすごく感じていいな。かわいいって思われたいとか、目的みたいのをすごくはっきりしてる絵も好きなんですけど、衝動、みたいな感じがすごいなと思って。

-竹下兄弟いいですよね。

雨:めっちゃいいですね。女の子が多いのかなって思ってたら、男の作家さんばかりだったのも新鮮ですね。

-たしかにネットで知られている作家は女性が多いですね。

 やりすぎかなって思うのもちょっと超えてやってると、いい感じになる。

雨:メタ少年展で竹下さんがスクラップブックを展示されていて、それを観て私もスクラップブックを作るようになりましたね。でも私自身にもスクラップブックの流れがあって、高校のときにシール貼るのにドハマリして持ち物全部にシール貼りまくってた。持ち物全部が雨宮っぽいすごい言われてました。今は若気の至りすぎて使うの超恥ずかしいんですけど。シール貼り重ねるのが今のスクラップにすごい通じてる気がする。

-いいですね。

DSC01045
スクラップブック

雨:やりすぎかなって思うのも、ちょっと超えてやってると、いい感じになる。っていうのをシール貼ってて気づいた。デコるのが好きだったんですね。

-雨宮さん自身の服装は派手じゃないですね。

雨:あー。よく、絵だけを知ってくれてる人と現実で会うと、「奇抜な着ぐるみみたいな服装をした人かと思った」って言われるんですよ。

-(笑)

雨:絵と本人とのギャップはあるかもしれない。

 部屋にゴキブリが出た話

-前回インタビューさせていただいた中で、ゴキブリの頭が部屋に落ちてたという話がありましたね。

雨:(笑)なんでそんなどうでもいい話ばかり覚えてるんですか。

-そういうのが印象に残っちゃって。

雨:たしかに、どうでもいい話ばかりしてた。絵を描いてると、筆を洗うバケツを置きっぱにしてて。それをそのままにしておくと、ゴキブリの飲み水になるらしくて。一時期ずぅっと放っておいてて、その水が蒸発したころに部屋を片付けようと思って漁っていたら、ゴキブリの死体があった。とっさに触っちゃったんですよね。びっくりして。

-えっ

雨:胴体つついたのかな。すると頭がとれた気がする。そこらへんはどうでもいいけど(笑)首の取れたゴキブリは脱水症状で死んだゴキブリだっていうのを知って、それからは、どんなに部屋が汚くなろうとも、ちゃんとバケツだけは片付けてる。すごい敏感になりましたね。

 作品を平行して制作する

-個展とは思えないくらい作品が多いですよね。

雨:そうなんですよ。今はそれが全部が部屋にあるんで大変なんですけど。ほとんどは絵を描き始めた一年間でつくったもの。去年はあんまり作品をつくってなさすぎました。

-かなりの短期間で作ってるんですね。

雨:描けるときはめっちゃ描けるんですけど、描かないときは描かない。あと、いくつかの作品を平行して制作することが多いです。立体作品とかは、乾くのに時間がかかったりするので、同時に絵も描いていたりとかしてる。ドールハウスとかも常に作っていて、絵を描いてるときについでに盛ったり貼ったりとかしてます。本読むときも、一つの本だけを読むんじゃなくて何冊かを平行して読むんですよ。けっこうごちゃごちゃになっちゃうんですけど、そういう作り方をしてる。スクラップブックもそうですね。

-スクラップブックも、たくさん描いたものを切り貼りして詰め込んでるから、一冊だけでも、もとになった材料を並べてみたら、それだけで一つ展示会が出来そうですよね。

雨:あれ、裏表両面にスクラップしちゃったのが勿体ないかなって思うときがあるんです。スクラップブックから外して、一枚の作品として貼れたらなって。でもまあ、なかなか作品って触ってもらえないから、手触りとかも感じてもらえてよかったかもしれない。

 ドールハウスをそこに住んでるかのように窓から撮ったりするのがたのしい

-立体も多いですよね。

雨:立体がすごい好きで。昔お父さんがビデオカメラ貸してくれて、シルバニアファミリーのドールハウスを、そこに住んでるかのように窓から撮ったりするのが、すごいたのしかった。写真とかでも、ちっちゃいものを人間の大きさのように写真撮ったりするのが好き。ちっちゃいものが好きなんですよ。消しゴムの、食べものそっくりの消しゴムのやつとか。ドールハウスのおもちゃとかもすごく好き。

-あめみさんのドールハウスの作品は、中もびっちり作り込まれてますよね。

DSC01042
ドールハウスの中

雨:それすごい頑張った。汗だくになりながら。

-内側とかどうやって描いてるんだろうと思いながら観てました。

雨:ああ、ラクガキだったり、コピーして、ちっちゃくしたやつだったり。でも絵を描いたのどうやってやったんだろう。けっこうぐちゃぐちゃ、ばーって無理矢理やってて。でも、けっこう強度には自信あるんで。

-そんなに丈夫に作ってるんですか。

雨:そう、丈夫なんですよ。

<続く>

You may also like